【年金】世界の年金資産残高、2011年に最高額更新

但し、世界の年金基金のバランス・シートは債務増加で弱体化

2012年1月31日

世界の主要13カ国の機関投資家による年金資産残高は、本日発表のタワーズワトソン・グローバル年金資産調査によると、2011年に前年の26兆米ドルから4%増加し28兆米ドルの過去最高額を達成した。2008年には年間で21%減少し2006年水準まで低下したが、2009年に対前年比17%と大幅に増加し、以来増加傾向を示しており、2011年もこの増加傾向が続いている。世界の年金基金残高は2001年には15兆米ドルであったが、同年以来、米ドル建てで平均年率6%の成長を達成したことになる。

同調査によると、資産残高は増加したものの2011年の世界の年金基金のバランス・シート(*1) は、資産・負債比率が1999年のピークから大幅下落し弱体化を示している。同調査によると、年金資産残高は世界のGDPの72%に達し、2010年の76%に比べると低下したものの、2008年の61%比、大幅上昇している。

「投資家に再度、思い起こしていただきたいのですが、2011年の下期6カ月間は、柔軟で適応性のある投資戦略、そしてリスクに対しより広い視野を備えた投資戦略の必要性が再認識された時でした。市場では極度なイベントがこれまで以上に頻繁に起きており、このような投資手法により斯かるイベントに対してもより柔軟に対処する事が出来る事に加え、信用リスクや流動性リスク等、よりソフトなリスク要素にも対応出来ます。不確実性が増す金融システムに於いて、過去数年間、多面的な要素を持つリスクに焦点が注がれ、同時に、リスク管理プロセスも、より定性的な手法を組み込み徐々にそれなりに発展してきました。しかしながら、リスクの適性な計測・管理が大半の年金基金のガバナンス・システムに強固に根付くまでには依然、道のりは長いと感じています。」と、タワーズワトソン・インベストメント部門ヘッド、大海太郎(おおがい・たろう)は述べた。

同調査が指摘するその他のハイライト:

P13カ国に於ける、2011年グローバル資産データ

  • グローバル年金資産(現地通貨建て)の過去10年間の平均年間増加率は6%超。
  • 日本は全世界の年金基金資産の12%を占めており、その他には米国、英国が依然として世界最大の年金市場で、其々59%、9%を占めている。
  • 同調査対象国では日本を除く全ての市場で過去10年の年平均複利増加率(CAGR)が伸びを示している(現地通貨建て)。
  • 過去10年のCAGR増加率(現地通貨建て)では、ブラジルが最も高い年率14%の増加率を示し、南アフリカ(13%)、香港(10%)、オーストラリア(9%)がこれに続いている。最も低い増加率は日本(マイナス1%)、フランス(1%)、スイス(4%)、アイルランド(4%)となっている。
  • 対GDP比での過去10年の増加率は、英国の年金資産が、最も成長し30%の伸び率を示し、GDP比101%を占め、これに続いてオーストラリア(+24%、GDP比96%)、オランダ(+23%、GDP比133%)、香港(+15%、GDP比34%)、米国(+12%、GDP比107%)となっている。同期間に於ける日本の対GDP年金資産は、1%下落し、GDP比55%を占めている。

P7カ国に於けるアセット・アロケーション

  • P7カ国に於ける過去16年間の資産組入れ比率は、債券が総額で3%下落し(40%から37%)、株式組入れ比率は、同期間中8%下落(41%まで低下)。但し、この下落の大半(7%)が2011年中に起きている。
  • 英国の株式組入れ比率は2001年の67%から2011年には45%まで下落(2011年単年で10%下落)。同様に米国でも同期間中65%から44%に下げている。株式組入れ比率が最も高いのは50%のオーストラリアで、債券組入れ比率が最も高い国は日本の59%となっている。
  • その他資産(オルタナティブ・アセット)、特に不動産、更により少な目なれど、ヘッジ・ファンド、プライベート・エクイティ、商品等の代替資産の組入れは、P7カ国では1995年の5%から20%に増加している。
  • 過去10年間、殆どの国でオルタナティブ資産への比率が増え、日本では2%から6%と増加した。米国では5%から25%と最大の伸び率を示し、スイス(9%から28%)、オランダ(1%から14%)、オーストラリア(14%から24%)、カナダ(10%から20%)が続いている。

「市場のボラティリティ及び債務国のデフォルトの可能性に係るリスク認識度の高まりにより、アセット・アロケーションが依然として極めて難しくなっており、企業や年金基金が長期的なリスク回避や短期的な市場機会、更には戦略的資産配分構成の再構築あるいは維持、等の投資の優先順位を決めるのに苦労しています。これらの投資判断は、さらなるスポンサーからの拠出、ヘッジ戦略、年金保険のBuy-In及びBuy-Out等々の多くの追加的な検討項目を度外視したとしても、既に複雑なものとなっており、外部の専門家に益々委ねられるようになってきています。」(大海)

P7カ国に於ける確定給付型年金(DB)及び確定拠出型年金(DC)

  • 2001年から2011年の10年間に、DC資産のCAGR平均年間伸び率は、DB資産の5%に比べ8%に達した。
  • DC資産残高は、今や世界の年金資産の43%を占め、2005年の41%、2001年の38%から伸びている。
  • オーストラリアが、DB型(19%)比、最も高いDC型年金資産残高(81%)を示している。
  • DC型年金資産がDB型資産を上回っている市場は米国、オーストラリア、スイスであるが、一方日本、カナダでは、DB型がほぼ100%を占めている。オランダは、歴史的にDB型年金のみであったが、現在DC型への移行が行われ、DC型資産残高は過去5年で6%の伸びを示し、総資産残高の7%を占めるまでに至った。

「機関投資家による投資が難しいような時期には、確定拠出プラン(DC)で自ら投資を行っている多くの個人投資家が、手数料控除後の純資産価値の増加は云うまでもなく、資産価値の維持に対しても大きな問題を抱えることになります。このような場合、企業や年金基金は、デフォルトの選択肢を適正に設定することを優先課題として位置づけるべきです。」(大海)

2011年の公的年金と私的年金

  • P7カ国圏の年金資産の65%が私的年金で、35%が公的年金で運用されている。
  • 英国及びオーストラリアでは年金資産の80%以上が私的年金で運用され、其々総資産の88%、85%が私的年金となっている。
  • 公的年金残高が私的年金を上回っているのはカナダと日本の2カ国のみで、其々総年金資産の61%、71%を占めている。

注釈

  • P13カ国とは、本調査対象の世界の年金市場のうちオーストラリア、カナダ、ブラジル、フランス、ドイツ、香港、アイルランド、日本、オランダ、南アフリカ、スイス、英国、米国の13の年金大国を意味する。これらP13カ国で世界の年金資産総額の85%以上を占める。
  • P7カ国とは、上記13カ国のうちブラジル、ドイツ、フランス、アイルランド、香港、南アフリカを除く7大年金市場を意味し、本調査対象の総資産残高の95%を占める。
  • 数字は全て端数処理され、2011年の数字は推定値である。
  • 全ての日付は、当該暦年最終日を示している。

(*1):国債利回りを用いて負債額を割引、資産残高の負債残高比率を基に計算。