今後、人材の流動化が進む中で、企業にとって必要な人材を「引き付け、引き留める」ためには、社員の方がその企業に属する「価値」を高め、認めてもらう必要があります。
そのための代表的なツールが報酬であり、企業は金銭のみならず、非金銭部分も含めたトータルの処遇戦略を構築する必要があります。
トータルリウォーズの目的
人材のアトラクション(惹きつけ)とリテンション(繋ぎ止め)は人事の永遠の課題と言えますが、欧米企業では2005年以降からPay for Performance(成果に対するメリハリの利いた処遇)からTotal Rewards(トータルリウォーズ、各種報酬を総合的に組み合わせた処遇)へと変化しつつあります。
表はトータルリウォーズの視点を示しています。
処遇・報酬を3つのカテゴリーに分けており、これら処遇・報酬の、最適な組み合わせ(ベスト・ミックス)を考え、リテンション効果を高めることがトータルリウォーズの目的です。
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マーケットで水準が決定される
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会社戦略と一体化させる意味で重要 (但し、この割合を増やしても繋ぎ止め効果は高まらない) |
アトラクション・リテンションには重要 より効果的なプログラムへの重点化が欠かせない |
| 必須プログラム(報酬) |
まず1つ目としては、「必須プログラム」があげられます。これは、社員を雇用することに伴い、発生する処遇(コスト)です。基本給や退職金・各種社会保険(健康保険や雇用保険など)があげられます。
ここでの重要なポイントは、「必須プログラムは各社の独自性によってその基準を決めてよい、というものではなく、市場の給与水準や法規制・ルールによってある程度水準が決められている」という点です。
退職金や各種社会保険は国の法令によって定められているケースが多く、基本給は、(特に欧米各国では)企業が定めるものではなく、市場の給与水準に基づき支給するものという考え方が確立されています。
| 業績連動型プログラム |
第一の必須プログラムが、社員全員に対して「共通」して支給されるものであるのに対し、第二のプログラム「業績連動型プログラム」は、社員個々人の業績・成果に応じて、「個別」に支給されるものです。これは、会社戦略とのアラインメント(Alignment、一体性)を図るために用いられるプログラムです。先ほど述べたように、成果主義型人事制度を導入した際には、特に業績連動型プログラムの充実が図られたと言えます。
しかし、どれだけメリハリの利いた制度を導入したとしても、そのことをもってモチベーションを高めることは難しいのが現実です。
逆に、必須プログラムと業績連動型プログラムの比率を見直し、業績連動型プログラムの比率があまりに高くなりすぎると、(たとえ高業績社員であったとしても)生活の安定が損なわれ、むしろ社員のモチベーションを低下させる事態にもなりかねません。
更に言えば、業績連動型プログラムをいくら充実させたとしても、リテンションにはあまり効果がなかった、という学びが欧米企業にはありました。
このようにしてみると、必須プログラムは市場が決めるものであり、企業の独自性はほとんど出せません。企業が勝手に判断して決めたとしても、市場水準に合致していなければ人材の採用・調達が困難になるのは自明なのです。
また、業績連動型プログラムについては、会社戦略との一体感を高めることが主目的であり、社員のモチベーション向上をメインの目的にすることは現実的ではない、という見方が一般的になりました。そこで、欧米企業では「業績連動型プログラムの制度のシンプル化」が進みました。複雑かつ手間のかかる評価や支給額決定のプロセスを排除し、制度・運用の両面での見直しを行ったのです。とりわけ、グローバル化(世界共通化)していくためにはシンプル化が不可欠であったという事情もありました。
| キャリア&職場環境プログラム |
そこで、第三のプログラムである「キャリア&職場環境プログラム」に注目が集まっています。第三のプログラムは非金銭処遇であり、昇格・昇進、教育・トレーニング、キャリアパス、異動、職種転換、オフィス環境、勤務時間管理など、社員に支給・提供されます。キャリア&職場環境プログラムは多岐にわたり、それに要するコストも膨大な額になっています。
しかし、会社内を見渡しても、上記プログラムは別々の担当者によって運営されていることが多く、必ずしも一貫性や整合性がとられているわけではありません。ましてやグローバルで考えた場合は、かなりの無駄が生じている可能性があります。
トータルリウォーズの視点では、「会社戦略とのアラインメント」と「社員」の視点から処遇プログラムを捉えなおすのが基本です。会社戦略との一体性があると同時に、社員にとって価値のあるプログラムを見極め、より最適な処遇の組み合わせを考えるのです。
社員のリテンションのためにはキャリア&職場環境プログラムこそが鍵となります。そこで、欧米企業は現在、他社と差別化できて独自性のあるキャリア・環境プログラムを構築しようとしている状況にあります。
多くの日本企業においても成果主義の次となる人事制度のあり方を模索しています。このトータルリウォーズの視点はこうしたあり方を考える上で参考になるところが大きいといえます。
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