タワーズワトソンの『グローバル・ワークフォース・スタディー』より

東京 - 2012年7月25日(水)– グローバルコンサルティングファームのタワーズワトソン(NYSE,NASDAQ: TW)は、新しい概念、持続可能なエンゲージメント(会社への自発的貢献意欲の持続性)が会社の業績に影響することを、最近の調査 『Global Workforce Study』で明らかにした。

ビジネスを成長させるにあたり、経営者にとって、従業員が有している「自発的な貢献意欲(エンゲージメント)」を高く維持することは非常に重要である。「持続可能なエンゲージメント」とは、最近では日本でも徐々に浸透してきているエンゲージメントの概念に加え、「生産的な職場環境」、「健全な就労状態」の二つの要素が加味されたものである。タワーズワトソンは、従業員のエンゲージメントにこの二つの要素が加味された企業では、エンゲージメントが低い状態の企業に比べ、業績(営業利益率)の伸びは3倍にもなったと、そのトラッキング結果を示している。

就労環境の整備が業績を左右する時代へ
いわゆる“従業員満足度”が、“従業員個々人の満足”という基準で会社の状況を測定するものであるのに対して、「従業員のエンゲージメント」は、“会社や事業の方向性”を物差しとして従業員の現状を把握する概念で、会社の成長に対して従業員が有している自発的な貢献意欲の度合いを示すものである。具体的には、(1)会社の方向性に対する理解(組織の目指す方向性を理解しそれが正しいと信じている)、(2)帰属意識(組織に対して帰属意識や誇り・愛着の気持ちを持っている)、そして(3)行動意欲(組織の成功のため、求められる以上のことを進んでやろうとする意欲がある)の3点で構成される。

今回の調査では、さらに一歩進め、このエンゲージメントを “継続的に高く維持する” ための2つの要件を、グローバル調査を通じてその重要性を検証した。(図1)

図1
「持続可能なエンゲージメント」の構成要素

図1:「持続可能なエンゲージメント」の構成要素

  1. 生産的な職場環境:ネットワーク環境やファシリティだけでなく、仕事をするのに十分な情報や権限があること、自分の仕事に影響をもたらす意思決定に巻き込まれていること、無駄な社内プロセスがなく、顧客に向けた仕事に集中できる状態であることなどがこれに含まれる。 実は、物理的な安全で衛生的な職場環境以上に、内向きな業務の多寡、権限移譲の状態などが、生産性に大きな影響をもたらしている。
  2. 健全な就労状態: 過度のワークロードやストレスといった、リーマンショック以降、顕著になった業務と人員数のアンバランスからくるWell-being(健康で安全な暮らし)の重要性が注目されてきた。調査では、「私は一日仕事をする上で必要とされる体力を維持できる」「私の仕事は達成感のある仕事だ」などを設問として設けている。英語ではEnergize(活力を与える)と呼ばれるこの領域には、仕事量や柔軟な働き方といったフィジカルな側面と、過度なプレッシャーや達成感の有無などの、メンタルな側面の双方が含まれる。
     

タワーズワトソンでは、エンゲージメントの低い企業群、エンゲージメントが高い企業群(いずれも、生産的な職場環境と健全な就労状態については測定をしていない企業群)、そして、エンゲージメントのみならず、生産的な職場環境と健全な就労状況についても測定し、かつそのスコアが高かった企業群の1年後の業績指標(この場合、営業利益率)をトラッキングし、調査したところ、そこに3倍もの差が見られることが明らかになった。(図2)

図2
「持続可能なエンゲージメント」がもたらす会社業績への効果

図2:「持続可能なエンゲージメント」がもたらす会社業績への効果
Source: Towers Watson’s Global Normative Database

持続可能なエンゲージメントのキードライバー
タワーズワトソンは、今回の調査から、持続可能なエンゲージメントの押しどころ(キードライバー)を重回帰分析を用いて同定している。今回の調査結果、持続可能なエンゲージメントのスコアとの相関関係が特に強く出た項目(その項目のスコアが高ければ持続可能なエンゲージメントのスコアも高く、低ければ低い、という項目がこれにあたる。言い換えれば、今回の調査では、その項目のスコアがもっと高ければ持続可能なエンゲージメントのスコアも高くなり、低ければ低くなった、と考えられる項目を指す)を調査した。

その結果、日本においては、トップ5に次の項目が入った。1.ストレス、ワークロードのバランス 2.企業の社会的認知や使命、3.直属上司、 4.会社目的や目標、 5.福利厚生。 グローバル結果との最大の違いは、グローバルのトップドライバーはリーダーシップ(経営陣)であり、日本ではトップ5にも入っていないことである。経営陣のリーダーシップが社員のエンゲージメントの押しどころにならない、トップダウンもボトムアップも効きにくい、特異な厳しい日本の状況を端的に示している。(図3)

図3
「持続可能なエンゲージメント」のキードライバー:日本の結果とグローバル結果

図3:「持続可能なエンゲージメント」のキードライバー:日本の結果とグローバル結果

グローバルのNo.1ドライバーはリーダーシップ
 

従業員に対するROI(投資対効果)は妥当か? エンゲージメントの低い社員を抱えることは経営効率を下げることになる
日本人従業員のエンゲージメントに関する調査結果からは、自分はハイポテンシャルと自認する人や回答結果からエンゲージメントが高いと特定された人と、そうでない平均的な日本人従業員とでは、圧倒的に前者の回答スコアが高いことが示された。(図4)

図4
エンゲージメントの高い従業員と、そうでない日本人従業員の格差

図4:エンゲージメントの高い従業員と、そうでない日本人従業員の格差


 

平均値で見た日本人従業員のスコアは、経営者から見れば落胆を禁じ得ないもので、同じように社員にメッセージを発したり、事業や人事に関する施策を打ったりしても、その浸透度合いや効果に大きな違いが出ることは想像に難くないといえる。しかし、自己肯定感を持っているハイポテンシャル、そしてエンゲージされた従業員は、経営者から見て、グローバル平均と同等、あるいはそれをはるかに超えるROI(投資対効果)があることがわかる。

日本企業にとって、エンゲージメントの低い社員を大量に抱えることは、経営効率を下げるということである。エンゲージメントの高い社員を持つことは、グローバル化の荒波に立ち向かう上でも、経営のボトムラインに効く施策であるといえる。

海外から見て魅力のない?日本人
従来から指摘されている日本人の「わからない」「どちらともいえない」の回答比率の高さは、特にリーダーシップに関する回答についての、中間的な回答比率の高さはグローバル比較においても特異である。(図5) 従来は、日本の経営陣の視認性の低さ、可視化されていない、という仮説が一般的だったが、今回の調査で、報酬とキャリアの可能性、といった項目を天秤にかけて比較する、自分自身の志向性を問う質問であっても、「わからない」と回答した日本人従業員が過半を占めた。

図5
経営と従業員の隔絶:無反応・無関心な日本人従業員

図5:経営と従業員の隔絶: 無反応・無関心な日本人従業員


 

この中間的な回答比率の高さは、従来グローバルから見た日本人像の輪郭をあいまいにさせてきた。本調査を指揮した岡田恵子ディレクターは、「否定的であれば現象としてとらえやすく対策も打ちやすいですが、この態度保留なのか、思考停止なのかわからない状況は、日本の経営者から見ても、グローバルの経営者から見ても、極めてわかりにくいと言えます。こうした結果を客観的にみると、ワークフォース=働く仲間としての日本人の魅力度は、グローバルからみて相対的に低いと言わざるを得ません。日本の従業員と企業の断絶(Disconnect)は、グローバルに戦っていかなければならない今、日本企業にとって重い足かせとなっています。」と危機感を示している。

真に対等な企業と従業員の関係構築に向けて
高い従業員エンゲージメントが高い成果を生むという認識がグローバルスタンダードになりつつある今、「どちらともいえない」「わからない」を連発する日本人従業員は自らそのエンプロイアビリティ(企業や組織から求められる人材であること、雇用可能性)を落としているともいえる。

岡田は、「この状況は、日本企業、外資を問わず、長期にわたる労使関係の悪循環によるものです。日本企業は従来、社員に動揺を与えないために、という名目で、従業員にファクト(事実)ベースで経営や人事に関わる状況を伝えてきませんでした。これが、会社が何とかしてくれるという意識を助長し、結果的に"自ら立つ"ことを阻んできたという経緯があります。そこに甘え、依存し、思考放棄してきた従業員側の課題も大きいでしょう。これが今、雇用、人件費という問題となって、日本企業の、そして日本人の雇用の屋台骨を揺るがそうとしているのです。」と述べている。

グローバル化の厳しい競争環境を生き延びるためには、厳しい現実のファクト精査とその認識、それを従業員に伝えることから逃げない企業の姿勢が求められている。と同時に、社内の業務プロセス、その背景にある内向きな文化や思考を見直し、過剰なチェックや承認のプロセスといったものが、従業員の顧客や市場に向き合う時間と意欲を阻害している現実を把握し、外に向いて仕事のできる思考、風土、プロセスに作り替えることが求められている。 

こうした生産的な職場環境が、のめりこむことのできる達成感のある仕事につながり、内からみなぎる健全な就労環境につながっていく。今、日本人従業員と日本の企業は、ともに大きな自己変革が求められている。


タワーズワトソンのグローバル・ワークフォース・スタディーについて:
全世界29の業種における中規模・大規模企業のフルタイム従業員32,000名以上を対象に2012年2月~3月の1カ月間、オンライン調査形式で実施。許容誤差はプラス・マイナス1%。なお日本での調査サンプル数は1,002名。 本調査は、従業員のアトラクション、リテンション、エンゲージメント、生産性に対する意識変化を測ることにより、従業員のパフォーマンスに影響する様々な分野や要因を、企業がより良く理解できるようデザインされている。

タワーズワトソンについて:
タワーズワトソン (NYSE, NASDAQ: TW)は、人事・財務およびリスクマネジメントの領域において企業の業績向上を支援する、世界有数のプロフェッショナルファームです。全世界に約14,000人の社員を擁し、報酬制度、退職給付制度、福利厚生制度、タレントマネジメント、リスク及び資本管理の分野におけるソリューションを提供しています。 ウェブサイトのアドレスは以下の通りです:
www.towerswatson.com